Web Site Photo Essay Series “Shimura Hiroshi Cambridge Journal”
志村博のケンブリッジ通信

第 4号 ・ 2000年 8月15日発信 ・ 15 AUGUST 2000 ・ No.4






夏の夕方、グランチェスター川筋をカヌーで行く


イギリスの夏至の頃は午後10時半頃まで明るい。


今から5年以上前のことである。アトリエ近くのいつもの散歩道であるケム川岸を歩いている時、
同じくグランチェスターの住人であるカーメン・ブラッカー博士と、ばったりと出会った。
彼女はケンブリッジ大学で教鞭をとっていた学者で日本研究家として高名な方である。
しばらく雑談をした後で、ブラッカーさんは突然こう言った。 「志村さん、私のカヌーを使いませんか?」

それ以来、私は“カヌーイング”の魅力にとりつかれた。
このカヌーは二人乗りで一人で運べるほど軽くないので、いつでもカヌーで出かける訳には行かない。
自然愛好派でラフな格好の友人が訪ねて来ると、これは幸いとカヌーでの散策に誘い出す。
アトリエのガレージからカヌーを担ぎ出し、ミル・ハウスのある川辺からカヌーを川面にすべり入れる。

カヌーイングには晴れた夏の夕方が最高である。太陽は西の空で輝いているが、
その日射しはやさしく、傾いた太陽光線は風景の陰影を際立たせ、シルエットを浮かび上がらせる。
木の葉を透過した光は金色にゆれて、その影を川面に映す。
そんな光の風景の中へカヌーでゆっくり入って行く。 至福の一時である。

2000年8月15日 志村博  グランチェスターのアトリエにて、



 グランチェスター辺りのケム川筋はケンブリッジから3キロほど上流になり、のどかな牧草地や森が続く。
川岸から見慣れた風景も、川面の視点から見ると全く異なった表情を見せる。 カヌーからの撮影は
陸上で三脚を構えては決して捉える事の出来ない映像を提供してくれる。



夏のケンブリッジは喧騒の観光都市!?





6月終りの学位授与式が済むとイギリスのアカデミック・イャー、すなわち一学年が終わる。
ケンブリッジの街に点在するカレッジでは荷作りをして出立する大学生の姿があちこちで見られる。
論文に追われる大学院生と、一部の理科系学生が実験などのため居残ることはあるが、
7月の始めにはケンブリッジの街から主役である大学生の姿がほとんど消える。

7月から9月にかけての夏の時期、学生達が消えたケンブリッジの主役は観光客と入れ替わる。
中世の面影を残すカレッジの建物の合間をケム川が流れる屈指の景観は、観光客を魅了して止まない。
夏休みをケンブリッジで英語を学びつつ観光する、いわゆる“短期語学学生”の数も急増する。
この美しい伝統的な学園都市は世界中から観光客が押し寄せる「観光都市」に変貌する。

ケンブリッジを訪れる観光客の数は毎年増え続け、10年位前から許容範囲を超えたとして、
カレッジや街は対策をとるようになった。 観光誘致策ならぬ、観光敬遠策である。
街は夏の一定期間の交通規制や観光バス乗り入れ制限、語学学校の新設認可中止を打ち出した。
主要なカレッジは寮内への観光客の入場を制限する目的で入場料を徴収するようになった。

それでもケンブリッジに押し寄せる観光客の数は増え続けている。観光シーズンのピークには
観光客の群れが街の中心部を占拠し、ケムの川面は景観を楽しむ人達で大変な騒ぎとなる。
観光客を乗せたパントと呼ばれる平底舟は交通渋滞?を起こす。 この騒ぎは9月の終りまで続く。
学生達がケンブリッジに戻り、本来の落ち着いた学園都市が蘇るのは10月になってからである。



 観光客はイギリス国内からだけでなく、世界各地から押し寄せる。彼らはとても陽気で楽しそうである。
爽やかな夏の日、晴れれば川面はお祭り騒ぎ、歓声が飛び交い、喧騒は一日中収まることはない。
残念な事に、 夏の観光客は学園都市“ケンブリッジ”の本当の姿に触れることなく去って行く。



イギリスの浜辺で見つけた“絶妙な配色”





ケンブリッジから北に高速道路を3時間、一般道を1時間ひた走ると北ヨーク州の海岸線に到達する。
ここ数年はこの海岸線が気に入って、毎年のように出かける。
この辺りの大きな港町“ウィットビー”、崖の上にホテルが並ぶ一角があり、ここに宿をとる事が多い。
はじめてここに来て、崖の上から下を見た時、思いがけずカラフルな光景が目に飛び込んで来た。

それはイギリス版の“海の家”なのだが、あまりもの絶妙な配色に感心してしまった。
この“海の家”は小さな小屋が一つ一つ独立して並んでいる。
この小屋は個人が長期間借りるシステムになっている。中にはデッキ・チェア―やお茶のセット等が
保管されていて、借りている人はここに来て中で着替えたり、お茶を飲んだりして海辺の一時を過ごす。

イギリスの夏はあまり暑くなることはない。 水は冷たく、海で泳ぐ人の姿はあまり見られない。
海辺にデッキ・チェア―を出して寛ぎ、砂浜で砂と戯れ、水に足を漬けるくらいである。
海上にはヨットやディンギーで風と遊ぶ人の姿が見られるが、他のリゾート地のような騒々しさはない。
イギリスは日本と同じ島国で人々は海を愛し、短い夏を惜しむように海辺のリゾートを楽しむ。



 この北ヨーク州の海岸線はヘリテージ・コーストと呼ばれ、様々な時代のの歴史的遺産が残されている。
断崖絶壁が続き、太古の時代を蘇らせる化石が豊富に出る浜辺や、中世の修道院の廃墟、
密貿易で生き長らえた絶壁に潜む村々、キャプテン・クックの里などなど、枚挙に暇がない。



 
トピックス更新コラム

    
 
 『今年の夏は私にとって異例の夏です。 25年ぶりに日本の盛夏を体験したのです。7月下旬に
 朝日ニュースターTV番組収録のため東京に10日間ほど滞在して来ました。 毎日の熱帯夜と35度に
 なる都会の熱気を全身で受け止めて来ました。 日本に行く直前のイギリスは異例に寒い7月でした。
 最高気温でも18度程で、夜は暖房を入れていた位だったので、そのギャップが凄まじかった。
 それでも夏バテする暇もなく、収録を終えて無事帰って来ました。8月になってからはイギリスも暑く
 夏らしくなり夏を満喫する人達がグランチェスターにも集っています。暑いと言っても25度位ですけど』
 2000年8月某日 志村

 『また日本に来ました。 年末の展覧会の準備やTV番組の収録などをしています。 今回、到着早々
 新しいノート・パソコンに切り替えました。 ところが、新しいPCは“Windows2000プロフェショナル”を
 搭載しているので四苦八苦しています。 なんとAOLやその他のソフトの幾つかがまだ“win2000”に
 完全に対応していないために、しばらくメールやプリンターも使えない状態でした。 最近“2000対応
 テスト版”をAOLから ダウンロードしてやっとメール再開しました。 しばらくの間、メールを下さった
 方々にご迷惑をお掛けてしまいました。 でも、最近は新しいPCライフを 楽しんでいます。 日本には
 11月1日まで滞在していますので、よろしく。』
 2000年10月某日 志村 





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