Web Site Photo Essay Series “
Shimura Hiroshi Cambridge Journal Diary”

 
ケンブリッジ通信 フォト・ダイアリー
 
バックナンバー 046
 


発信元/写真・文・デザイン: 志村博
 

    

  『 中旬になって12月らしい寒さが戻ってきました。 気温は10度以下、コートを着込んで外を歩きます。
 ニューナム地区のガチョー群団も、遠くから私の姿を認めて全速力で寄ってきます。 餌をもらえるかと、
 来るのですが、カバンから取り出すのは残念ながら“カメラ”です。 公園の人影も少なく、お腹が空いて
 いるのかも知れません。 暗くなるのも早く、放し飼いの家禽でさえも、厳しい季節の到来です。 野鳥や
 野生動物にとって、これから生存を賭けた越冬が始まります。 それに比べれば人間は楽なもんです。』
 2004年12月中旬某日



    

  『 ケンブリッジは、風がなく穏かな日が続いています。12月なのに、あまり寒さを感じません。 空気が
 湿気を多く含むので、霧もよく発生します。 午後になって晴間がのぞいたので、フェンに出かけました。
 “フェン”は、ケンブリッジの北に広がる平坦な地方で、版画作品の素材にもなる気に入りの場所です。
 広大なフェンを車で走りながら、地平の彼方に霧が流れる光景を眺めます。 午後3時を過ぎた頃から、
 冬の太陽が地平線に近づき、柔らかい光を放ちながら、水蒸気層の中に、ゆっくりと沈んで行きます。』
 2004年12月上旬某日



    

  『 久しぶりにジェフリー・アーチャー邸の庭を歩きました。 奥庭にある離れの書斎を訪れたのですが、
 芝生を横切っているとき、赤や橙色の不思議な形の実がぶら下がっている潅木が、眼に留まりました。
 帰り際に庭師さんと会ったので、木の名前を訊きました。 ラテン語の学名は聞き取れませんでしたが、
 俗名は“ストロベリー・ツリー”だそうです。 この時期、花と実が同時につくそうで、木の上の方に小さな
 白い花が咲いています。実は鳥たちの好物で、すぐ食べられてしまい、花は来年の冬、実になります。』
 2004年12月上旬某日



    

  『 街での所用を済ませ、川沿いの小道を遠回りしながら駐車場に戻りました。 かすかに霧がかかり、
 風景がぼんやりと暗い空に浮んでいます。 何気なくカメラのシャッターを切ったら、幻想的な空の色が
 写し出されました。 街灯のフォグ・ライトが空気中の水蒸気に反射して空の色と混ざります。 方向に
 よって濃紺から赤紫と変わります。 鉄橋の所まで来ました。辺りに無用な街灯はなく、自転車で人が、
 橋を渡る時、白と赤の灯りが流れます。 川岸の杭にカメラを置いて撮影しました。 冬の夕散策です。』
 2004年12月上旬某日



    

  『 もう2週間ほどで冬至です。 午後4時頃には、夕闇が迫ります。 街角はクリスマスの光で一杯です。
 マーケット広場の八百屋さんでは、野菜と一緒に、クリスマスのドア飾りや、ヤドリギが売られています。
 市庁舎や広場のイルミネーションは例年の使い回しで、お馴染みのパターンですが、わき道のローズ
 クレセントのライトは新しくなりました。 しかも、キングスパレードにも星型のイルミネーションが点いて
 います! キングス・カレッジなど歴史的なカレッジが並ぶ前の道が点灯されるは、初めてのことです。』
 2004年12月上旬某日



    

  『 メドーの“西洋サンザシ”もすっかり葉を落として、赤い実だけになっています。野鳥たちが啄ばんで、
 辺りには種や食べかすが散らかっています。 実はまだたくさんついているので、しばらくは残りますが、
 今年の冬は寒くなるとの長期予報がでています。 春までは持たないでしょう。 メドーの牧草は緑色が、
 鮮やかです。 散歩したり犬と戯れる人たちは、顔見知りばかり、夏のような騒がしさは、もうありません。  
 来年のイースター頃までは、観光客が大挙して押しかける事はなく、静かなメドー風景が、広がります。』
 2004年12月上旬某日



    

  『 ケンブリッジに戻り、まずグランチェスター・メドーを歩きました。 比較的穏やかな12月の始まりです。
 気温は東京に比べれば低く10度前後で、風も冷たいのですが、湿度が高いので、肌に優しく“柔らかな”
 感じがします。 私の不在中に、この時期としては珍しい初雪があったらしいのですが、風向きが変わり
 一夜にして気温が上昇したそうです。 最近は朝方に霧がでて、昼頃に晴間がでます。メドーの小道は、
 所々ぬかるんでいて、長靴に履き替えての散歩です。 正午頃でも、陽射しは低く、冬到来を実感です。』
 2004年12月上旬某日



    

  『 北の地平線上に月は留まり続けています。 航空機がわずか南西にコースを変え、南下を始めると、
 空が明るさを増してきます。 バレンツ海南の入江“白海”上空にかかりました。 海面が凍結して長い
 亀裂が何本も走っています。 この後、フィンランドを横断してバルト海上を南下しながら北ヨーロッパに
 入ります。 気がついたら、空の色彩トーンが変わっていました。 地平線が青く、雲が薄紫に、逆転です。
 ヨーロッパ上空に至ると、急に飛行機雲が多くなります。よく見渡したら、5機の機影が目視できました。』
 2004年11月下旬某日



    

  『 飛行機が北極圏内に深く入り込むと、太陽が地平線の下に隠れ、風景はうす暗い藍色に沈みます。
 斜めの淡い光に照らされた雪や氷がほの白く浮び、シベリア北部の不思議な地形が、モノクロームに
 広がります。 蛇行する大河や、うろこ状の台地が、この季節だけのまだら状パターンを、見せています。
 もう少し経つと、この地域は酷寒で白一色になりますが、一日中太陽が顔を出さない暗黒の世界です。
 今回のフライト航路は通常のコースですが、北側の席に座ったこともあり、新鮮な光景に出会います。』
 2004年11月下旬某日



    

  『 今まで、欧州に向かう便で右翼側に座ることは少なく、北側の空を見ながら飛ぶのは、久しぶりです。
 北上につれて暗くなりますが、かなり北寄りのコースを飛ばない限り、完全に暗くなることはありません。
 月が北の地平線で白く輝き、反対の南側地平線では、太陽が雲層に見え隠れして、オレンジ色の光を、
 放ちます。 空の光景が、淡い色彩のグラデーションで広がります。 私が夢中になって撮影していたら、
 他の乗客も集まり、扉の窓から空を眺めながら、会話が弾みました。 B747型機ならではの余裕です。』
 2004年11月下旬某日

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