志村博 「ケンブリッジ通信」 フォト・ダイアリー / バック・ナンバー 051


 バックナンバー 051 



    

  『 週明けの朝、冷え込みました。 待ちに待った冷え込みです。 池には薄氷が張り、薄っすらと霜が
 降りました。 晴上がり青空が広がっています。 気温が上昇して午前中に池の氷も霜も融けましたが、
 雲一つない青空は夕方まで続きました。 特に用はなかったのですが、ケム川沿いの小道を歩いて、
 街まで出かけました。 風もなく気温は10度近くまで上がり、散歩には最適の日和でした。 カレッジの
 橋が並ぶ辺りでは、雁の群が羽を休めています。 春になれば、北シベリアに帰って行く渡り鳥です。』
 2005年2月上旬某日



    

  『 カレッジ裏手の道を歩いていたら、一面が薄紫色になっている場所を見つけました。 カレッジ構内
 ではなく、公道に沿った緑地の1区画です。 人為的に植えられたのではなく、自然に、増えて広がった
 野性のクロッカス群生のようです。 園芸用のクロッカスには様々な色彩の花がありますが、野性種は
 ほとんどが薄紫色の花弁とオレンジ色の花芯なので、草の上に置かれた、パープル色のベールです。
 逆光で見ると、柔らかい冬の陽射しが薄い花弁を透して、夢のように淡い色光が、微風に揺れます。』
 2005年2月上旬某日



    

  『 水温む季節には早すぎるのですが、人々は久しぶりに顔を出した暖かい太陽に誘われ、川遊びに
 興じます。 冬とは思えない軽装でパンティングやカヌーを楽しんでいます。 両方とも、漕ぎ手は濡れる
 ことを避けらないのですが、まるで気にならないようです。 晴れると、夜間の放射冷却で朝方は冷えて
 始まり、日中は気温が急上昇します。 この日、早朝の野原が霜で真っ白だったとは想像しがたいほど
 暖かい陽気になりました。 平日なのに、冬の日差しを楽しむ人たちが笑顔でケム川を行き来します。』
 2005年2月上旬某日



    

  『 中旬になってからは、気温が下がり、雨もよく降ります。 風が強くなったので、天気が変わりやすく
 時折り雲が飛ばされて、青空が広がります。 絶妙なタイミングで、グランチェスターの丘に立ちました。
 見渡す限り爽快な景観ですが、風が身を切るように冷たく、散歩する人の姿は、ほとんど見えません。  
 釣人が1人川面を見つめています。 川が曲がった辺りに白い点が2つ動きます。 先日の2羽の白鳥が
 寄り添うようにいるのが見えました。 やはり、新しい白鳥カップルが誕生したようです。 そこだけ“春”』
 2005年2月中旬某日



    

  『 メドーやフット・パスを歩いていて気がつきました。 今年は野鳥達の食べ残した実が多いようです。
 西洋サンザシやローズ・ヒップの赤い実が、まだ所々に付いています。 晩秋に鈴なりだった果実は、
 少しづつ野鳥やドウ・マウス(畑鼠)などの野生動物に食べられて、減ってゆきます。 いつもの年だと
 この時期、ほとんど残っていません。 暖冬の影響で、他にも食べ物が十分にあったからでしょうか?
 それとも、昨年夏の多雨が、例年より多くの実をつけさせたからでしょうか? これも気候変動かな?』
 2005年2月中旬某日



    

  『 風が止んで穏やかな日和になりました。 しかし、気温は低めで晴天が続きます。 夕焼けが美しく
 野に立って夕陽が雑木林に沈んでゆくのを眺めました。 強風の後で、空気中に水蒸気が少ないため
 夕陽は沈む寸前まで輝きを失いません。 カメラを持つ手は冷たくなりましたが、風がないのでフードも
 なく野を歩いても、それほど寒さを感じません。 また、日本に行く日程が近づいてきました。 あと少し、
 ここで春への推移を見届けますが、私がケンブリッジを発つ頃には、東京の方が暖かくなるでしょう。』
 2005年2月中旬某日



    

  『 我家の庭で、水仙第1号が咲きました。 長年にわたり、色々な種類の水仙が無計画に植えられて
 収拾がつかなくなっていた上に、去年のアトリエ引越しの際に、グランチェスターの庭から気に入りの
 水仙を移植したので、いたる所から水仙の葉が伸びてきて、混迷が深まりました。 庭の整備も急務
 なのですが、アトリエ引越し以来、ほとんど進んでいません。 一番咲きの水仙は、黄色の長い花芯を
 寒風に揺れています。 水仙のピークは4月初旬で、3月後半からどこの庭も黄色の洪水になります。』
 2005年2月中旬某日



    

  『 2月半ばを過ぎて、予報通り天気は変わり易く気温も下がったのですが、時々太陽も顔を出します。
 長い間、観光シーズンの開始はイースター休暇からと言うのが定説でした。 ケム川をパンティングで、
 観光する光景も、3月下旬まで見られませんでした。 しかし、この数年ですっかり様子が変わりました。
 冬も観光客が訪れ、寒風に吹かれ毛布に包まれながらも、川観光に興じます。 橋の上にも観光客が、
 群がっています。 冬季の観光客が増えたのか? 冬が暖かくなったのか? おそらく、その両方です。』
 2005年2月中旬某日



    

  『 日本は再び冷え込んで、東京近郊でも積雪があったとか!ケンブリッジの最高気温も5度前後まで
 下がりました。 シベリア直行の北東風が吹き、にわか雪が時々空を舞います。 京都から客人が来訪
 しました。 冷たい風が吹くメドーを案内しましたが、これでも京都より暖かいそうです。 川面には、例の
 新婚白鳥カップルが仲良く浮んでいました。 まるでオシドリ夫婦のように寄り添いながら、シンクロした
 動きで餌を探しつつ、川を行き来しています。 穏やかな冬の日々は一休み、暫く冷え込むそうです。』
 2005年2月下旬某日



    

  『 イギリスはやっと冬型の気候になりました。 前線の通過に伴う積乱雲の塊が瞬間的に激しい雪を
 降らせます。 そんな劇的な光景をグランチェスターの丘から眺めました。 青空に遠くから白い雲塊が、
 ゆっくりと近づいてきます。 雲の底面から白い滝のような流れが地上に降りそそぎ、その流れの中に
 太陽光が斜めに射し込み輝きます。 雨の場合は灰色で、白く輝きません。 案の定、この数分後には
 暗くなり、5分ほど激しく雪が舞いました。 雪は融け、何事もなかったように、青空が再び広がります。』
 2005年2月下旬某日

 ● 改行位置は文字サイズを “中(M)” に設定して構成されています。
  時間の流れは、最新版とは逆に“上から下”に再編成されています。








Photo, Essay & Web Design by Hiroshi Shimura 写真・記事の無断転載はご遠慮下さい。