バックナンバー 054 


    

  『 最も北寄りコースを飛んでいるので、シベリアの地上風景はいつもと違います。パンダのように白と
 黒に分かれた山塊がありました。 よく見ると白い山脈には木々がありません。 血管網のようにくねる
 河川や、縦縞に侵食された山肌など、撮影に夢中になっていたら、オランダ人の客室乗務員が来て、
 しばし写真談義に花が咲きました。 彼女も同じカメラを使っているとか! 写真が趣味なんだそうです。
 搭乗機は北上を続け、山岳地帯から北シベリア低地に出ました。 レリーフのように台地が浮びます。』
 2005年3月中旬某日



    

  『 シベリア大陸の北海岸線を越えて、北極海の南に広がるカラ海上空に達しました。 沿岸部の氷は
 隙間なく凍結して表面は無数の線が走り、所々“お神渡り”のような盛り上がりもあります。 ところが、
 さらに北上すると、巨大な亀裂が氷上を走り、海面が覗いています。 陸から離れ、海流の影響に因る
 のでしょうか? これ程、極点寄りを飛行するのも珍しく、写真談義をした客室乗務員に、飛行コースに
 ついて訊きました。 地上からの航空管制指示で飛ぶそうで、ほとんどが、気流や天候の要因だとか。』
 2005年3月中旬某日



    

  『 カラ海からバレンツ海へ入り、氷が無くなったと思ったら、突然ノルウェーの北端部に出てきました。
 長い海岸線に沿って南下を始めます。 白く輝く山々、リアス式海岸が美しく、
窓から目を離せません。
 かつて地上を鉄道とバスで旅行した“ナルビック”や“ボドー”上空を飛行します。 今回のフライトでは、
 雲で地上が覆われていない間、ほとんど窓から外を眺めていましたが、映画も2本観ました。“Ray”と
 “Shall we dance?”両方とも期待以上に感動的な映画でした。 睡眠不足気味の充実飛行時間です。』

 2005年3月中旬某日



    

  『 ケンブリッジを発った2月下旬は、ヨーロッパ全体がちょっとした寒波に襲われていました。 降雪で
 フライトに影響が出たので、乗り継ぎ地アムステルダムで1泊して日本に向かったほどです。 その後、
 冷え込みは続いていたらしいのですが、3月中旬になって気温が上昇し、一挙に“春”が到来しました。
 帰りのフライトは、あっけないほど順調で、定刻通りヒースロー空港に帰着しました。 春陽気に誘われ、 
 久しぶりの街を歩きました。 暖かい南風が心地よく、至るところで水仙の黄色い花が揺れています。』

 2005年3月中旬某日



    

  『 ケム川に架かる橋から、パンティング(舟遊び)を楽しむ人々を眺めました。 なんと夏の格好です!
 半袖シャツだったり、腕をまくったり、川岸の柳はまだ冬景色のままなのに、暖かい陽射しに、
人々は
 浮かれています。 私もジャケットを着て歩いていたら、汗ばむほどでした。 ケンブリッジの最高気温は
 20度近くまで上昇して、初夏の陽気です。 ヨーロッパでは、イースターの休暇シーズンが始まりました。
 ケンブリッジは、休暇で“カレッジ見学”をするヨーロッパ大陸からの若者グループで賑わっています。』

 2005年3月中旬某日



    

  『 日本大使館で開かれる講演会「ロンドンの夏目漱石と日本近代文学」に出席するため、ロンドンへ
 コーチ(長距離バス)で向かいました。 いつものようにテムズ川沿いの“エンバンクメント”で途中下車、
 時間調整も兼ねて、しばらく河岸を散歩しました。 着いたのは午後4時頃ですが、青空が広がり、まだ
 夕方の気配はありません。 思えば“春分の日”まであと僅か、日が長くなりました。 冬至のころなら、
 もう、暗くなっている時刻です。 ミレニアム橋とウォータールー橋の間で“テムズの春”を眺めました
。』
 2005年3月中旬某日



    

  『 この辺りのテムズ川北岸には、中型船が係留されていて、パブやレストランとして営業しています。
 そんな1隻に乗り込んでみました。 突然やって来た“春本番”に、甲板の上では人々が軽装で寛いで
 います。 春の陽射しを浴び、川風に吹かれ、笑顔が溢れ、みんな楽しそうです。 明るく暖かい日和の
 到来は、人々の表情も変えました。 ミレニアム橋の上では、“バスカー”が音楽を演奏し、渡る人にも
 余裕が感じられ、心も和みます。 南風がもたらした、この初夏陽気は、今しばらく続くのでしょうか?』

 2005年3月中旬某日



    

  『 ロンドンの日本大使館がある“グリーン・パーク”に来ました。 入館するには少し時間があったので、
 公園の中を歩きました。 ここもいたる所、水仙の黄色い洪水です。 地平線に近づいた西日は、優しく
 水仙を照らします。 夕暮れが迫る
公園内には、まだたくさんの人々が、草の上や、デッキ・チェアーに
 座っていたり、木陰では愛を確かめあうカップルなどがいて、賑わっています。 こんな光景を見ながら、
 数日前まで日本にいて、イギリスが氷点下に冷え込んだニュースを聞いていたことが、嘘のようです。』

 2005年3月中旬某日



    

  『 日本の近代文学をテーマにした講演会は、大使館のボール・ルームで行われました。 この部屋に
 入るのは何年振りでしょうか? 時節柄、海外の領事館は要塞のようになりました。 入館に際しては、
 厳しいチェックがあり、事前の登録も必要です。 私が写真を撮ることになりましたが、撮影に関しても、
 様々な制限があり、館内の間取りが分かるような撮影や説明は一切出来ません。 でも、以前に比べ
 美しい内装になり、講演の後のレセプションも厳かな雰囲気です。 帰英早々、有意義な一日でした。』

 2005年3月中旬某日



    

  『 下旬に入り、初夏のような陽気は一段落で、雨が降ったりしていましたが、再び晴れ上がりました。
 このところ、平年より気温が高い日が続いていて、日中は15度前後になります。 晴れ間がのぞいた
 午後に、グランチェスター“バイロンズ・プール”川沿いの小道を歩きました。 風のない川面に対岸の
 木々が映り込み、穏かな日和です。 この区域は、長年自然環境が保護されてきましたが、今年1月、
 ケンブリッジ市が地元の重要な“自然保護地域”として正式認定し、環境保全の作業も始まりました。』

 2005年3月下旬某日

 ● 改行位置は文字サイズを “中(M)” に設定して構成されています。
  時間の流れは、最新版とは逆に“上から下”に再編成されています。








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